(ショートストーリー 「由美子」)
昔、由美子という女と同棲していた時のこと。
仕事でしばらく家を空けてて、ある日のこと、由美子に電話すると電話口で猫が啼いてる。
ところがその猫の声を良く聴くと、人間の男が猫の真似をしているようだった。
由美子の奴、オレが居ないのをいいことに、また浮気してるなと思い、直ぐに家に帰って部屋の鍵を開けると、案の定、由美子と男が二人して裸で抱きあって寝ている。
「何、寝てんだ!」と言ってその男のケツを蹴飛ばしたら、二人して慌てて飛び起き、着るものを身につけ、男は正座して手をついてオレに言った。
「由美子さんのお兄さん。はじめまして。よろしくどうぞ。」
由美子のヤツ、また今回もオレのこと兄貴にしてやんの。
由美子の方を見たら、男の後ろであぐらかいて座って、オレに向かってV-サインしてんの。ヤバい女だ。
それでも、こんなことだろうと思って、さっき男のケツを蹴飛ばした時、浮気された男のそれじゃなくって、兄貴としての力の入れ方で蹴飛ばしたオレも、なんかヤバいんだろうな。
由美子とその後どうなったかは、今、オレが独りでこうやって住んでんのが答え。
ただ、あんなに良い女と住めたのは幸せだったんだろうなと、最近思い始めてきたところだ。
由美子、どっかで生きてんだろうな。
(完)
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