『昔むかし、あるところに、ちいさ なお姫さまがいました。 お姫さまはタピオカが大好物で、 それはもう毎日毎日おなかいっぱい 食べて暮らしましたとさ。 めでたしめでたし。 そんなわけはない! さっそくだ けど、この物語はここから悲劇の展 開に突入する! ある日、姫様がタピオカとやらを 食べている間に突然倒れてしまった もんだから国中が大騒ぎ! 原因? 知らないよそんなの、そ れを探るのがお医者さまの役目って ものさ! さぁさぁ、物語のはじまりです。 さよなら僕のタピオカ』 頭痛がやまない 眩暈もす る不思議な病さ 身体がだるい 食欲だけ は残ってんのに 王国一番の 名医が僕 を診断していく 早く治して おやつに タピオカ食べたい 「先生、私は……?」 珍し い病気です 「あの、名前は……?」 急性 タピオカ症候群 「どんな病気なんです……?」 タピ オカを食べると 「どうなるんです……?」 タピ オカになっちゃいます 「は?」 さよなら僕のタピオカ 二度と黒 い粒を食べてはいけない さよなら僕のタピオカ 君が恋し すぎてタピタピタピタピ! 不治の病らしいけど それを食 べなければ健康そのもの 医者はそれだけ告げると そそくさ とお城をあとにした タピオカ禁して3時間 早くも我 慢ができない タピオカ禁して半日間 なんだか お肌が痒いよ タピオカ禁して1日目 手足の震 えがやまない タピオカ禁して3日目 みんなの 顔がタピオカに げっそりと痩せた 姫様は既 に見る影なく 事情を知らない 臣民たち が押し寄せた これでも食べて 元気を取 り戻してください 大好物ですよ タピオカ 食べてください 「少しくらいならいいかな……」 タピ オカになるぞ 「それでも別にいいかな……」 いい わけないでしょう 「あぁ、しゃぶりつきたい!」 後 悔しますよ 「タピオカとして生きる……?」 好き なものになるのは良い事か? 「 うーん……」 僕がタピオカになれば きっと誰 かに食べられちゃうでしょうね タピオカのない人生 そんな人 生ムリです絶対ムリです死んじゃい ます! さよなら僕のタピオカ これはき っと僕の人生そのものさ さよなら僕のタピオカ 君が恋し すぎてタピタピタピタピ! 失うことで気付いた 本当に大 切なものはなにかと なにを恐れているのさ 欲望に任 せてタピオカ食べるよ! もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ 「我が人生に一片の悔いなし……」 あるところに ちいさな お姫様がいました 彼女の人生は とても楽 しいものだったとさ