「好きですか」の難題に、 笑顔で返すしかできない。 まるで悪魔にからかわれたように、 私の答案(こたえ)を 君は待っている。 放課後の教室に、 君だけを残す時間が好き。 ふたりきりになっても 許される理由(わけ)になるでしょ、 ねぇ。 きっと女生徒(あのこ)のように 隣を歩けないのは、 待つ制服に、揺れる白衣。 それがふたりの距離だから。 熱くなるほど幼女(おさな)い心が ばれちゃわないように、 君にとっての先生(おとな)になる フリして担う、秘密のクラス。 「好きですか」の難題に、 笑顔で返すしかできない。 まるで悪魔にからかわれたように、 私の答案(こたえ)を 君は待っている。 淡い恋でした、ってアルバムに してあげた方がいい。 終わりを告ぐチャイムが いつ鳴るか、それがたまらなく 怖い。 きっと女生徒(あのこ)の方が 君にお似合いだよなんて、 去る制服と、揺れる白衣。 ふとした言葉も傷つけてしまう。 失うものが何もない無邪気な眼で 苦しめないで。 君のテストに先生(おとな)さえも 応えられない、言葉に詰まる。 「好きだよ」と全部棄てて、 抱き寄せてしまいたいのに。 そんな強い心じゃいられない。 私の答案(こたえ)に罰を付けて。 これでいい。君のために。 そう決めたのに。 去る制服へ、靡く白衣。 思わず君を引き止める。 「好きですか」の難題に、 許されない答案(こたえ)を書いた。 君の将来(あした)を縛るだけの 独り善がりな、恋の約束。 ただ君の悲しむ顔を、 もう見送らなくていいなら、 たとえ悪魔と呼ばれてもいい。 甘くとろけるような ひとときをあなたに。