AWA
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説明文

目が覚めた?映画はもう終わったよ。あなた、映画の途中で痙攣起こして昏睡したの。他の人はみんな映画見終わって帰っちゃった。いま、映画館にはあなたひとり。それで、自己紹介だけど。私はあなたが見た映画。あなたの頭に入って今はあなたを膝枕している。あなたをひとりにしたくなかったの。あなたはひとりでこの映画を見て、ひとりで帰ってゆく。最初に入って、最後に出てゆく。その他の人たちが入ってくるのを見つめ、出てゆくのを見送る。無意識に彼らの横顔や髪を見ながら人の温もりに触れている。映画はあなたの無感動や無関心の空白を補ってくれるけど、あなた自身は自分の手に触れる自分の片方の手の温もりにすら嫌悪を抱いている。生温い自分の体温に苛つくの。それを感じて私もあなたに苛ついた。だから、こうして介抱してるの。あなたが目を醒まして安易な感動や関心に浸って欲しくないから。あなたが欲しているものはあなたの頭の中にある。孤独や死への反発は生への渇望ってゆうけど、簡単に言えば、苦痛と恐怖でしょう。それを、頭の中で一杯にしてやるよ。生皮剥いで、頭の中を感覚と想像の苦痛の汗で満たして、一体、死を迎える生がどれだけ、もがき、のたうち回るかを知るんだよ。死の後に地獄があるんじゃなくて、死ぬ前に永遠の苦痛に満ちた地獄があることをこれから始まる映画で味あわせてやる。痙攣と昏睡は身体が苦痛から逃れるための悲鳴だ。この一瞬、恐怖を忘れて目を覚ましたようだけど、次の回が始まったら、また、さっきの続きだ。あんたの頭はその首から離れない限り、ここからは離さない。
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