スーパーの惣菜を入れたビニール袋をぶらつかせながらアパートの2階に帰る。部屋に戻ると冷蔵庫の前にビニール袋を放り、畳を越えてサッシ窓を急いで開ける。暑さもそうだが、こもった空気のにおいが嫌なのだ。夕日が斜めに部屋の中の陰鬱を照らしながら嫌が上にも今日も独りであることを感じた。網戸を引き、ビニール袋から惣菜を出し、ちゃぶ台に並べラップと蓋を剥がす。冷蔵庫から瓶ビールとコップを出し、畳に座りながら本を手に取る。読みかけの箇所を探しながら、ビールの栓を抜きコップに注ぐ。今日の惣菜はお煮しめ、ほうれん草のごま和え、煮卵と角煮、コロッケ。いつもの場所にいつものものが並んだちゃぶ台の上を本を読みながら器用に割り箸が行き来する。年月の色合いに染みた本のページをめくりつつ、ふと活字の印刷の字体に気を取られ読むのを休む。ビールを飲み干し、食事の断片のような夕食を終えるとガラスとプラスチックの骸に成り果てたちゃぶ台を放っておき、畳に寝転がり本の続きを目で追う。心のどこかでこの本が読み終わる時の虚ろさから逃げ出したい思いがあるのに気づく。
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