シナモン糖の世界では大概のものはシナモン糖で出来ている。僕たちの住むちっちゃな小屋もシナモン川に架けられた全長3メートルの橋も毎日届けられる彼女からの手紙も。それがシナモン糖の世界。
シナモン糖の世界では西に太陽が沈んだと思った瞬間に東から太陽が昇りはじめている。夜はほんの瞬きの間しかないから大概の人はいつも寝不足。それがシナモン糖の世界。
シナモン糖の世界では時折さざ波のような悲しみがすべての人に押し寄せるけれどそれ以外はみんないたって平穏な日々を過ごしている。そして誰も自分の年齢を知らない。
そしてシナモン糖の世界では誰もが人生の終わりを平然と迎え入れる。それがサラサラとしたシナモン糖の粒に還ることだとみんな知っているから。
それがシナモン糖の世界。
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