地球最後の君に告ぐ。

ある朝、ベッドでメッセージの呼びかけに目を覚ますと、そのメッセージは3000回目のもので、彼女が昏睡している間に人類はすべて外惑星に旅立ち、一人残されたことを知る。彼等は彼女のために交通、食料生産、娯楽などの高度なインフラシステムを稼働させたままの都市を一つ残し、残りは荒廃にまかせた状態で立ち去ったのだ。彼女は病室の窓に立ち、外を見ると、鳥が木々を渡って飛び、その向こうに自動運行の電車が走り、ビルには彼女が昏睡する前に人気だったアイドルのライブ広告が映し出されていた。病院を出るとコンビニや薬局の電気は付いており、カードで新鮮なサンドウィッチとコーヒーを買うことができた。今月号の雑誌を買い、夜になり部屋に戻り外を見ると、自分がいる場所から数キロの場所内には明かりが見えるが、それ以外は闇に覆われていた。つまり、この都市は彼女一人のために稼働している遊園地のような世界なのだ。ただ、40世紀に生きていた彼女にとって、インフラや娯楽はそういうもので、すべて人以外のものが勝手に運用していた。唯一無いのは人の気配と騒音、あらゆる双方向の交信、だった。メッセージによるとあと一ヶ月内でこの状態は消え、その先は自分１人で都市の運用を考えて都市に実行させなくてはならない。この都市を自分のために生かすことを考えなければならないのだった。