あんた ちばけた事ばあ抜かしようたら ほんまおえりゃーせんで 吉備津の糞餓鬼が なあ? さんざめいとる夜の端まで 梅の香りで満たしといたらあ ようけ嗅ぎや ようけ嗅ぎや 人は言うわ 初祢の背に咲いた 紅梅は彩の極みじゃて 上等じゃろうが 上等じゃろうが 初祢に惚れたんか おめえやこ しらんわ しらん言うとんじゃ呆け ちばけなや この梅は抱けまあが しらんわ しらん言うとんじゃ呆け たいぎいわ そがんこの梅がええなら 見るだけじゃ よう見いや 夜も遅うに乏乏来てから そがあな冴えん糞餓鬼に何で初祢が 抱かれにゃいけんのじゃ なんならいっぺんだけ触るか 嘘じゃ呆け 寝呆けとんか はよ去ね ああそうか あんたは貢か 食われる前に初祢を 抱きとうなったんか ええ度胸じゃ ほんならこっち来いや 死に怯えようても盛るんか 何を真に受けとんなら おめえやこ しらんわ しらん言うとんじゃ呆け ちゃあけとんか この梅を愚弄すな しらんわ しらん言うとんじゃ呆け もう逝けや 喰うてほんで終いじゃ むかしむかし この梅に憑いた氏神様は 男を侍らせては食いようたそうじゃ 中でも語り部の一族が好きでな そのせいで継がれるべき 神話がありゃせん 伝説喰いの神様よ 「最期じゃ」 「よう見いや」