キレイゴトばかりがもてはやされる 僕らの居場所は、 この閉ざされた扉の中では憎しみや 怒りを隠すことはできない。 人の生き死にを軽々しく語る 奴もいれば、 まるで選ばれた 人であるかのように悦にいった 顔をひけらかしている 男もいるんだ。 この国の管理人は、 いつも眠そうに半分しか 開いていない目を、 さらに虚ろに中空に泳がせていて、 管理とは名ばかりの力を 誇示することにしか興味を 示さない。 この世界はとても美しい。 まるで僕らはいないみたいに。 血を流して倒れている 人がいたとの噂を聞いたけれど、 この深い雪に埋もれて本当のことは 誰も知らない。 ただ神妙な顔をして、 実は楽しそうに口を 動かしているだけなんだ。 人と関わり合いを 持つのがわずらわしいので、 一人でいるのを好んでいる訳だが、 なぜだが僕から何かを持ち 去りたいと思うやつばかりが 近づいてくるんだ。 そんな彼らに、 それは僕のものだよと注意すると、 手のひらを返したように怒り 出して、 汚い言葉を投げつけてくる。 この世界は優しい。 まるで僕らはいないみたいだ。