私は牝鶏 暗い運命に 泣いている 私は牝鶏 いつもそわそわ クックックックッ泣いている 庭のかたすみ ビール箱 積んで作った 鶏小舎に 飼われたこの身の 不仕合わせ 今日もあしたも その次も 生めよ生め生め 生まなけりゃ ロースにするぞとおどかされ 泣き泣き卵を 生んでいる 雄鶏は 知らん顔 朝も早よから コケッコー ちょっと気どって コケッコー ひとつおぼえの コケッコー 陽気に浮かれて コケッコー コケッコーコケッコー コケッコーコケッコー ほんに結構な 御身分だけど それにひきかえ この私 餌は菜っ葉の 切れっぱし それもちょっぴり 申わけ 一日一個の ノルマさえ まゝにならない 悲しさよ 私は牝鶏 暗い運命に 泣いている 私は牝鶏 いつもそわそわ クックックックッ泣いている 都のすみの そのすみの 三坪の庭の 鶏小舎で 泣き泣き卵を 生んでいる 哀れな哀れな 牝鶏の 悲しい声を 聞き給え