AWA

< Episode of AZUL >

Track byMYTH & ROID

477
3
  • 2023.10.25
  • 3:29
AWAで聴く

歌詞

これは遥か昔、遠い国の、 小さな島の、ある街の物語── ある日、海岸に、 ひとりの少年が打ち上げられた。 少年はどこから来たかも、 自分がなにものかも 覚えていなかった。 街の人々は、 これを海の神の思し召しだと考え、 ある老夫婦に少年を引き取らせた。 老夫婦は、遊び道具として、 少年に絵筆を与えた。 少年は少しずつ、 絵を描くことを覚えた。 少年が描いたのは、人。 すべてを失った空虚な 少年にとって、 街の人々の豊かな表情は、 あまりにもまぶしかった。 心が躍ると、筆も踊った。 少年の絵は街で評判になり、 人は彼を「神の手を持つ少年」 と呼んだ。 数年の時が過ぎ、 老夫婦は病に倒れた。 少年を残し、 あっけなく亡くなった。 少年は、二人の姿形を残そうと、 彫刻を作った。 それはまるで、 生き写しのようだった。 人々は、 その生々しさに恐怖を抱いた。 少年が老夫婦の魂を奪ったと騒ぎ 立て、彼を「死神の手を持つ少年」 と呼び、街のはずれへ追いやった。 少年には人々がひどく醜く見えた。 怒りと悲しみの混じった、 とても黒いものが胸に満ちた。 しかし少年は、 再び彫刻を作り始めた。 今度は、 自分を見て恐れおののく街の人々を 作り始めた。 さらに時が経ち、 子供たちが噂した。 やがて海が上昇し、街が沈むと。 大人たちは噂を耳にすると 恐怖にかられ、 それを真実かのように信じた。 噂は海の神に届き、明くる日、 海が静かに上昇をはじめた。 人々は我先にと街を出ていった。 しかし、少年は、 街に残ることにした。 少年の生涯は、街とともにあった。 空虚な心は、 人々の感情と人生に焦がれ続けた。 最後まで街とともにいたい。 愛も悲しみも、 すべてをくれたのはこの 街なのだから。 海は、 次第に街を飲み込んでいった。 少年は最後に、 自らの彫刻を作った。 憂いを宿し微笑むその表情は、 少年そのものだった。 沈む街を見届けると、 少年はどこともなく歩き出した。 胸に残る、微かな熱を携えて。

このページをシェア

MYTH & ROIDの人気曲

MYTH & ROID
の他の曲も聴いてみよう
AWAで他の曲を聴く
はじめての方限定
1か月無料トライアル実施中!
登録なしですぐに聴ける
アプリでもっと快適に音楽を楽しもう
ダウンロード
フル再生
時間制限なし