ここに生まれた時 僕に名前はなかった 陽炎の真ん中に1人落ちてきた ゆらり ひらり 木漏れ日になりたかった 見るものの全てをロームに塞がれて もがいてもがいても愛は 見つからない 名もなき詩人は今日も行く 筆先だけを頼りに 慈しみさえ知らぬまま いくつもの今を刻む 最後 土になる時 僕は無名に還る そんな日を待ち侘びた いつでもいいさと ふわり ぽつるりと 雲になりたかった 空を震わせ 流砂に記せ 僕が愛した孤独の讃詩を 名もなき詩人は今日も行く 魂を預けて 花の名前ひとつ知らぬまま 造花の詩を奏で 詩集が風に乗り空を舞う頃 身体は透き通り空気のように消えた 名もなき詩人は今日を逝く 筆先だけを頼りに 慈しみさえ知らぬまま いくつもの今を刻む 詩人は今日を逝く 魂を預けて 花の名前ひとつ知らぬまま 造花の詩を奏でて