天狗界では人気鼻タレで 鼻商品ならおまかせあれ だけど全毛穴から飛び散る 人間界への憧れが止まんない! 両親がソフトにやつれるまで 土下座(おねだり)したかい ありまして 「3年だけ渡人間界を許す その間に人間界に 必要な存在になれ」 天狗パワーで目立っても 正体バレたら 強制送還(さとがえり) 方法がわからず虚しい帰宅部生活 人間と何かを 成し遂げればいいのかな? バンド組んで売れっ子に なるってどうだろう! よし!メンバー探し! クラスメイトに人間が 二人しかいないってどういうこと? 偶然俺みたいなバケモノばかり 確率論のひざが笑ってる バケモノ同士だからわかるんだ あいつは地底人 あいつはペソ あいつに至ってはズボンプレッサー 家電と同じクラスってなんだ! どうにか僅かな人間を 誘って作った拙いバンドは 仲良しではあるものの モチベーションはそこそこで 自慢の鼻をフランクに 便利グッツ扱いするメンバー ドラムを叩くな! イモの固さ確かめるな! 傘かけるのやめろ! ドアストッパーにするな! パイ生地伸ばすな! ドラムを叩くな! 隙間の掃除に使うな! ドライバーにはならねぇよ! 頼むから 大事にしてくれ! 愉快な皆と過ごすうちに 大舞台に立つチャンスが舞い込んだ 珍しく真面目に練習して 絶対成功させるって 誓い合った だけど不覚にも 右手を怪我して ピックすら持てなくなった 代理を立てても自分が許せない だってこの手が動かなくたって この鼻がギターに届く もう正体がバレたっていい 鼻に消えない傷がついて 鼻タレができなくなってもいい どうしてもこの舞台の上に 皆と居たいって思うから よく見えもしない未来なんかより 今が大事になったんだ 下手くそな合奏が響く どの世界よりも楽しげに 俺はこっそり帰るけど 後悔なんてしてないから 何もかも破綻しちゃったのに どうしてこんなに朗らかなんだろう