水曜日 継母の従兄弟を訪ねてみる 金曜日 姪が歯医者に行くので付き合う 「暇だね。」 俺の顔になにか付いてるかい 覗き込んでニヤリと囁いた 「ボタンを掛け違えたまま 大人になるのは嫌ね。」 ああ、聞いた風なことを言う娘だね そうさ、 遺産があればしばらくしのげる 今夜、 あつらえた黒のスーツを下ろす 「どうにも深刻さが足りない、 お前には。」 溜息をついて叔父は嘆いた 「ボタンを掛け違えたまま 年をとるのは恥ずべきことだ。」 親父の通夜でからまれる グラスの底に沈む顔と目が合えば 苦笑いで野郎はうそぶいた 「俺だけのシャツの着こなし。 姿見の前を逃げ出し ボタンを掛け違えたまま 年をとるのは切ない。」 あぁ 知ったふうな事を言うね