── これは、 私の生涯を賭けた最高傑作 呪いの人形『メロディ』の物語 暗く落ちた深淵に 沈み込んだ眼差し 幼い私は 静かな感情 閉じ込めた ただ「許して」と 縋るような声あげ 責罰と狂楽を刻まれた ── 酒に溺れた父の虐待に耐える 日々 そんな私にも、たった一人 友達が居た それが、人形の『メロディ』だった 彼女はいつも側に居てくれた 破滅を囁く《人形》 眠り落ちた夜に火をつけて 嗚呼 燃え上がる心と 父を見下ろした 「抱きしめてよ」「私を愛してよ」 「暗闇に沈む手を掴んでよ」 溢れ出す感情の中 灼け焦げた人形 世界が眩んだ ── 倒れていた私を引き 取ったのは 遠い親戚の若い夫婦だった 最初は優しかった だが次第に 「その暗い瞳が気持ち悪い」と 暴力を振るうようになった やがて私は、そこから逃げ出した 人目を避け逃げ込んだ 古びた小屋の中で 嘆きと孤独が 私の両手を奔らせた ただ 失った友達の面影を 追い求め 縫い続けた人形 ── 私は人形を作り続けた 指に血が滲んでも、 どんなに歳月が流れても ただひたすらに……。 私の心を埋めてくれるのは 大好きな『メロディ』 しか居なかったのだ 狂気に取り憑かれた手が 数多の人形を生み出す 嗚呼 冷めやらぬ想いが 奇跡を望んだ ついにその瞬間が訪れた 完成したあの日の《人形》 溢れ出す感情の中 微笑んだ人形 私を見つめた 「もう何も要らない」 「もうこの手を離さない」 抱きしめた私に 腕の中の君は 口を開いた 「やっと大人になったね」 身体を望んだ《人形》 胸の中で今 口づけて 嗚呼 私に突き立てた 牙で貪った 「大好きだよ」 「ずっとここに居るよ」 「いつまでもどこまでも一緒だよ」 薄れゆく意識の中で 完成された人形 旋律重ねた