託馬野に 生ふる紫草 衣に染め 未だ着ずして 色に出でにけり 水鳥の 鴨の羽色の 春山の おほつかなくも 思ほゆるかも 白鳥の 鳥羽山松の 待ちつつぞ 我が恋ひわたる この月ごろを 我が形見 見つつ偲はせ あらたまの 年の緒長く 我れも偲はむ 情ゆも 我は思はざりき またさらに わが故郷に 還り来むとは 近くあれば 見ねどもあるを いや遠く 君が座さば 有りかつましじ 今更に 妹に逢はめやと 思へかも ここだわが胸 いぶせくあるらむ なかなかに 黙もあらましを 何すとか 相見そめけむ 遂げざらまくに