降り出した雨 傘もないままに 歩き続ける 独りの老人 錆びた時計と 黄ばんだ地図と 僅かな愛の記憶を持って 雨に煙る街 人は何を祈る 踏みにじられた 名もない草や 忘れ去られた 戦いの址を すべて流して 雨は降り続く まるで彼まで 呑みこむように 雨に煙る街 人は何を祈る 誰も知らない彼の名前も 夢も 朝日も 虚ろな瞳に 刻んだ怒りも 声にならない 叫びだけが聞こえる 遠く 降り出した雨 傘もないままに 歩き続ける 独りの老人 滲んだ汗は 雨にさらわれて 涸れた涙も 川に溶けてく 雨に砕かれて 消えた夢の抜け殼 何を追いかけて んは行き場をなくす 雨に煙る街 人は何を祈る 空に何を祈る 誰も知らない彼の行方も 涙も 運命も 虚ろな心に遺された時間も 声にならない叫びだけが 聞こえる