月が垂直に立ち上がってる 閉ざされた鉄格子の小窓の向こう 低い屋根瓦から物悲しく 上弦の月が吠えている 一日四十本のタバコの煙で 砕けきしむ私の肋骨が折れるほど 薄い胸板を思いきりふくらまし 冷酷な世間の風を吐き捨てた おうおうと私が泣くから おうおうと月が吠える <♪> 叱る母もなく怒鳴る父もなく 帰る家も壊れ沈む時 最後に残るものは悲鳴じゃない 弱き者たちへの 瞳(まなざし)が在る さぞかし辛かったあの人間たちと おちょこ一杯分もの塩っ辛い涙を 私の命と貴方の命で酌み交わせば 五臓六腑に優しさがしみる おうおうと私が泣くから おうおうと月が吠える どうか愛しき人間よ、 ご無事でいて下さい どうか恨まず憎まず悪びれず 雲行きを明日に 賭けて私は行きます 弱き者たちへの 瞳(まなざし)在る場所へ おうおうと私が泣くから おうおうと月が吠える