春が来ては 花の名を知り 夏には雲の名を 覚えていた 秋が吐息を 白くして また過ぎたら 見たこともない 季節があった 冬より冷たい 季節があった 炎の霙(みぞれ)が 降りしきる 赤い疾風が 吹き荒れる 人は心を 言葉にしない 肩より低く頭を垂れて 肩より低く頭を垂れて 肩より低く頭を垂れて 冬が過ぎれば 夏が来ていた 人影だけを 黒く映して 陽射しを遮る 緑がなくて 緑がなくて 私の周りに 誰もいない 見たこともない 季節が過ぎた 獣のように 人が走る 叫ばなければ 聞こえない 人は夜が 来る度に 肩より低く頭を垂れて 肩より低く頭を垂れて 肩より低く頭を垂れて 焼けた大地に 砕けたガラス 涙のように 輝いた 私はここから 歩き出す 声あるならば大地を語れ 見たこともない季節のことを 声あるならば大地を語れ