新しい生活 幸せに焦り出す 稼ぎは少なく バイト 汗水流す 金にすがらず 富豪の陰口叩く 外の誰に伝わる? 安定羨む レッドブルを飲んでも 翼をさずからず あれだけ嫌がっていた冬を待つ真夏 幸せな時でも不安はなくならず 中立がないとすれば いつでも○か× 結婚が現実味を持ち始めて そん時初めて真面目に未来を 見始めて 六十歳でラップする自分を想像して ステージに誰も立ってなくて 本当ぞっとして 「ラッパーのままで死ぬ」 昔書いた歌詞が 首を絞める 不甲斐ない話だ 必ず過去になる今約束して 暮らし変わった未来で さあどうやって守るか? 情報の拡散 可能性はたくさん いつだって脈ある 妄想と策略 ある意味のラストチャンス 夢込めたアルバム 渾身を出すが 飛び抜けず落胆 これが売れないのかよ? ここじゃ食えないのかも? 「次こそは必ず」 四度目の嘘 よし決めた 「仕事を探して働く」 公務員試験を受けようと思う 年齢もギリギリ たぶん正直厳しい けど“試験”って響きに 可能性が1・だろうと 今必死に地道に頑張ることで 道切り拓ける気がした 一日一日誰よりも勉強して 効率良く試験の傾向見て 一点でも多く点取る姿勢 面接までいきゃ何とかなる 今日まで口で生きてきたんやから 受かることをゴールとしてでなく あくまで スタートと見て目指す 受かってからこそ一生懸命働く 俺は社会へ羽ばたく そうなりゃ 子供とか夢のマイホームとか もう夢の話じゃなくなる なんて夢みたい 夢みたい 夢見たい 夢みたい 夢見たい 膨大な範囲 合格のライン 6、7割 ボーダーライン 身内には相談なし 小っ恥ずかしい 欠く歌詞 リリックノート 放ったらかし 40問択一式マークシート ある意味「12問×」でも合格に あれもこれも手出し 逆にそれが敗因 捨て科目 何にするか見極めが肝心 ワニ本が鍵 生物は暗記 政治経済 落とさず 確実 「速攻の時事」買い 人文の地理や思想 歴史等 ダイレクトナビ 英文は速読 古典はゴロゴ 資料解釈 読解を繰り返し 復習が大事で クラブ行けぬ毎日 ラッパーとして今の俺は正しい? 受けれる模試 全て申し込んで その日を目標に徐々に調整 試験時間 二時間 短く 数的に時間食う 捨てる二次関数 模試重ね 時流れ どちらまで? 苦悩と日々と幸せ 劇的とまで成績を上げ どうにかなって 合否「可」の判定 さらに追い込みで 予備校に飛び込み 知識叩き込む 夏期講習 高卒程度の試験範囲ゆえ 高校生と授業を受け 一次試験 自信がついて 試験一日目以降 意識して 作文・面接対策 並行しながら 復習怠らず ワンマンライブ思い出す 本番二ヶ月前 セットほぼ決まる 今すぐにでも舞台に立てる その状態からさらに仕上げる 本番九月 七月の夏 受験希望出す受付始まる 履歴書のような作りに困惑 その枠埋めるために本買う なりたいものが決まっていて その理由探すのが滑稽で 添削現場で講師が指導 そこで過去も削られてった 「音楽について記述があるけど 特異性があり 良いと思うよ けど公務員の副業は法律によって 禁止されているから 今後の活動について ここで記入の必要はないけれど 面接では必ず聞かれるから その時しっかり答えるように」 自分でも資料たくさん読む 副業禁止規定103条 過去リリースしたアルバムの印税 受け取れなくなるの? 特例 農林水産業 不動産業等 賃貸料 職務に支障を来さぬよう 且つ営利目的でない活動 「ライブはノーギャラでならね」 だがね 俺の中でそれはダメ 長年得たギャラが示しつかない 身が切れるほど感謝したお金 俺ギャラ一律 足元見ない 友情割り? 存在しない 交渉次第で下げれるギャラなら 最初から口にしない 今さらノーギャラでライブ出来ない 公務員なりゃギャラ得てライブ 出来ない つまりもう俺はライブ出来ない? 掴むとは何か手離すこと? 合格発表十一月 採用が四月 十二月から三月 ラッパーでいれる間に出す 全て歌ったラストアルバム それを最後に身を引こう 七年続けた自己主張 ぶっちゃけた話 調子どう? まあ人生あるわな いろいろ 履歴書用にマシな 坊主にしてもらおうと行った 床屋さん 年季の入った鋏を 持ったおじちゃんが話してくれた話 「兄ちゃん 就活か 頑張りや! 仕事は 最低十年続けてみんとものにならん から 入ってすぐあきらめたらあかん よ!」 後ろで奥さんらしき人が 優しそうに笑ってた おじちゃんが初めて鋏を持った時も 二人はすでに出会ってたのかな? 「仕事は十年か ラップならあと三年やったのに また振り出しか 今度は十年続けよう」 夢はラッパーになることだった 二〇〇五年六月に叶った 掴んだ夢を離さないように 思えばそんな日々だった 当時 一人じゃ続けれなかったことを やめる決断を一人でしていい? 辛いのは俺? 違うだろうね 別の夢掴みかけてる両手 いくつか歌詞が嘘になった その度本当だった 今から出る行動は 全曲ラブソングの延長上だ とにかく全てを一枚にする 無責任ながら最後の責任 無言で去らず「さよなら」を言う 昔ラッパーであれたこと 人前で歌うたえたこと これから過ごす未来の中で その過去に何度救われるだろう? 短い間でありましたが そこに俺の居場所はありました 「七年お世話になりました ありがとうございました」 ここまで思い募らして 試験に落ちたら全て狂うから 絶対合格を掴む そして終わらせるんだと ラストスパート 面接時の質問想定 「音楽のあきらめはつきますか?」 「あきらめるのではありません やりたいことやりきれたのです」 受験番号 A-1006 その数字は 市のホームページ 一次通過者発表の中になかった 安定へとつながるはずの未来は デスクトップに塞がれ 電源を消した後 真っ黒い画面に自分の顔が映った あれだけ勉強して この結果は俺に何を教えてるのか? めっちゃ働くのに 俺を採らなかった市役所は阿呆だ 初めて行ったハロワ クレヨンで描かれたパトカー 職に就く夢捨てきれず 「資格が必要だ」 もがけばなんとか おーい 自分は凡人 才能なかった さじ投げ あきらめて終わりかい? それしかしてないお前に 出来ることなんてそうそう他にない 「歌詞など勉強するもんじゃなくて 内で勝負するもんでしょう?」 じゃあ聞くけど そうして今まで挑んで 現状変わんなかったでしょう? 結局はお前次第だよ 最近努力はしていたの? おーい 得意なものから資格を取ろうと 探してはみたのだけれども 料理も出来ない 土地に興味ない 法律にだって強くない 強いて言えば 物書くことぐらいで これもそれという資格がない 「作詞家にでもなろうかな?」 そんじゃ ラッパーのままでいいんじゃない? 思えば 音楽 諸々 色々 触れてない時期が長かった 影響恐れたからなんだ けど自分はほとんど空なんだ 今さら資格書読むくらいならば 詩集の一つ二つでも読んで ない“言葉の才能”を伸ばす 努力をする方がよっぽど賢い? 「自分の力を信じてやまない」 「自分が負けるはずなんかない」 「誰かの教えには耳を貸さない」 「他から学ぶことなんかない」 活動始めて 今日に至るまで 順調なことが多くあり 成功積み上げたつもりが 積み上がってたのはプライドでした たとえばドラクエで鍵が違って 開かない扉があったとする 俺は鍵を探しに行かず ドアの前でボタンを連打してた それ以降になかなか進めないのは そこまでしかいけないからじゃなく そこまでの力しかない 自分のせいだったと気付いた 長年ただただ 好きでがむしゃらに 七年続けてきたことを いきなりきっぱりとやめて 一から何かを始めることよりも それに工夫してなんとかどうにか 続けようとすることの方が おーい よっぽど現実に思えた 夢をあきらめて現実を生きます ここまで好きなこと続けて 今さら就職するなんて それは夢とあきらめて 現実を見てラップを続けます 夢をあきらめて現実を生きます ここまで好きなこと続けて 今さら就職するなんて それは夢とあきらめて 現実を見てラップを職にします