腕にそっと触れていた。 長い睫毛の影を、 私は夏の影に準えた。 じっとりと汗をかいていた。 あなたのこの木の舟を、 この海に離すのだ。 夏が終わる度に、 あなたを忘れぬようにと 努めるんだろう。 あなたは、いつも夏の匂いがした。 きっと私の特別をあなたは、 携えているんだろう。 あなたのはしゃぎ方は海を 知らない。 この先の日々も苦しむのなら、 共に背負うことをあなたとしたいん だ。 それを幸せと呼ぶ愚かさを 許してほしいんだ。 あの漣に倣った 軽やかに踊るような、 あなたを強く、強く覚えている。 体が許せるほどの空気を 吸い込んでも、 息が苦しいんだ。 夏を一人偲ぶ。 このまま海に溶けてしまえたらな。 華やいだ声が遠く響くことは、 悠久を望む儚さだ 左手に添えた向日葵の色は、 おもしろうてやがてかなしき黄色。 きっと遺されたこの悲しみは、 生まれ育ててきた幸せと 同じなんだろう。 あなたの袖を濡らす、私の弱さ。 夏の匂いが遠ざかるまで、ずっと 遠く、 遠くを見続けては潮風を結う。 日成らず朽ちる舟よ、漁火を越せ。 この先も探し続けることに、 どうか忘れてほしいなんて 言わないで。 日々をそう尽くすような愚かさを、 許してほしいんだ。