AWA

元少年ライカ

301
5
  • 2010.02.03
  • 6:05
AWAで聴く

歌詞

記憶に忘れられ、わたくしは宇宙の はずれで待ちぼうけ。 記憶に忘れられ、わたくしは宇宙の はずれで待ちぼうけ。 記憶に忘れられ、わたくしは宇宙の はずれで待ちぼうけ。 記憶に忘れられ、わたくしは宇宙の はずれで待ちぼうけ。 たとえば名前、名前がございました 。上履きの背に小さくにじませたあ の文字。ちゃんづけに「くん」か「 さん」、あるいはあだ名、呼び捨て 。多くの方にそれを用いて後ろから お声がけされたらば「はい」と返事 をし振り返る私。願いを込めて命名 されたのであろうその響きは泡のご とくはじけてゆきました。けれどき っと私は愛しておりました。 たとえば故郷、故郷がございました 。幼少期を過ごした街、あるいは村 があり、砂にまみれ真っ黒になり遊 びに明け暮れる日々、河川敷で夕暮 れを追うようにのろのろと自転車を 並べ家路に向かったり、そこで幾年 の三が日を過ごしたのでありましょ うか。たどるべき道は沈み、途絶え てゆきました。けれどきっと私は愛 しておりました。 たとば家族、家族がございました。 一つ屋根の下で卓を囲み、枕を並べ て、寝食芯三を共にし築かれた絆。 週末には車でどこか遠くに出掛けて 、たくさんの写真をアルバムに収め ては昔の思い出を肴に酒を酌み交わ したのかしら。全ては焼かれ空へ昇 ってゆきました。けれどきっと私は 愛しておりました。 たとえば仕事、仕事がございました 。雑居ビルの一画に構えた小さな事 務所で誇りを持ちひたむきに情熱を 傾け、部下同僚顧客と額を合わせた のでしょうか。くたくたに帰宅して ネクタイを緩めつつ夢うつつの子供 の寝顔を覗き込んだはずです。すべ てはデリートキーで削られてゆきま した。けれどきっと私は愛しており ました。 かつて。私にも大切な小説があり、 飽きもせず一枚の絵画を壁にかけ、 季節のつまむレコードに針を落とし ては自分だけの特別な風景を胸に呼 び起こしたり、暦には一年に一度の 日付に丸を付け、諳んじた映画の名 台詞を口ずさんだり、短冊に認めた いくつもの淡い夢を夕刻の誘いにな びかせたのでしょうか。くしゃくし ゃに顔をしかめ獅子舞に頭を噛まれ 、6月の猛暑日に西日差す公園の噴 水でびしょ濡れになって水遊びをし たり、蛾の飛ぶ灯の元、友とカラカ ラと笑って、託児所から自宅まで我 が子の手を引き、おいしそうな夕げ の香りに玄関に迎えられ、唐突な知 人の死の知らせに肩を震わせてハラ ハラと涙をこぼしたのでしょうか。 おっと、お恥ずかしい次第です、ま たいつもの癖が。右から左へ流して くだすってかまいません。未来なら ぬ過去えず?の空想を禁じえず、根 も葉もなき かきあぐねようとして 。けれど一切が宇宙の塵と化したな ら、それをいくら美化し美しくめか し繕おうとも許されると思うのです 。許されるとも思う。まったく困っ たものです。 砂浜のお城は波にさらわれて、完膚 なきまで流されてしまったようなの です。干上がった海岸には小粒の貝 殻と微かな塩の匂いのみが残って、 わたくしはからっきし失われてしま った、がらんどうな空白として今こ こにおります。そこにあるというこ とは、美しいものです。たとえそれ が辛く厳しいものであったとしても です。もしもこの世が記憶の堆積で あったなら、私はさしずめ宇宙の闇 をさまようライカ犬でありましょう 。いいえ、その順序さえ今では定か ではございません。神隠しにあった 私の思い出たちは果たしてどの空の 下をほっつき歩いているのでしょう か。旅の途中どこかに落としてきた のでしょう。そうです、ひとり、旅 をしておりました。野くれ山くれと それは長い道のりでもっとも今とな ってはどこが始まりで、終着駅がど こなのか皆目検討もつきません。そ ればかりか一体何故にさすらうのか 。その理由さえ分からないから風に 吹かれるまま流されるまま足の向く 方向へ放浪し続けたのでした。 朝昼夕晩と一日は過ぎました。東西 南北と風景は移りました。 貴方にはどのように感謝すればいい か、露頭に迷い込んだ野良犬同然と なった赤の他人の私によくしてくだ さいました。冷えますからこちらに きてあたりなさい、と優しいお声を かけてくださいまして、思えば人と 言葉を取り交わすという行為、いや 、それ以前に自分の声を耳にするこ とですらいったい、いつぶりでしょ うか知るよしもありません。 吹き抜けのあばら屋にひだまりと雨 だれをもたらしたあなたただ星のよ うに押し黙り、我々の抱きせしむも の唾棄すべきもの、それがはからず も一致するということはよくある悲 劇的な喜劇。運命とは無邪気なもの ですと肩をすくめ微小を浮かべた。 このように目と目を合わせて言うこ とはなんだかとてお新鮮でこそばゆ いものでして、私を捉えるその眼こ そまばゆくて冷たい宇宙に洗わるる 太陽を思わせます。世界とは鏡を通 し、内眺むるとより繊細に明瞭に浮 かび上がるのでしょう。おや、奥に 人が一人写っております、陽炎のよ うにゆらゆらと揺れて、とてもとて も懐かしいお方が、ね、写っており ますよ

このページをシェア

あるぱちかぶとの人気曲

あるぱちかぶとのアルバム

13曲2010年
あるぱちかぶと
の他の曲も聴いてみよう
AWAで他の曲を聴く
はじめての方限定
1か月無料トライアル実施中!
登録なしですぐに聴ける
アプリでもっと快適に音楽を楽しもう
ダウンロード
フル再生
時間制限なし