散るためだけに咲き誇る 花の薄紅や 車窓をよぎる果てしない 海の薄藍に 息づく輪廻が あなたを誘うみたいで 透き冴える目を閉じたら 弾けてゆく うたかたへと。 ほんとうの哀しみを 求めたとしても、 ほんとうの涙しか そこにはなかった。 海へと還す滴と花びらを。 終幕は待つのではなく 迎えるものと 言いたげに吹く風で 肺を満たした夕 不確かであるという 確かさで結んだ 口づけを交わして またほどけてゆく あだばなへと。 ほんとうの愛しさを 求めたとしても、 ほんとうの虚ろさが 胸を焦がすだけ。 黄泉へと返す心と言葉を。 たゆたう空を 誰かが海と呼びました たよりない 細いまつ毛がふるえることを あなたがかなしみと呼びました 小指と小指が すこしだけふれたことを 僕が恋と呼びました 鍋の底にはりついたような、 白のシャツに染み込んだような、 咲かずに枯れた花のような、 言い知れぬ温度をのこして あなたはどこかに行きました 「わたしのなにを、 知っていると云うのです」 然は然りながら、 あなたはゆめゆめ知ることを 許さない 「たをやかに朽ちていく様を、 どうぞご覧なさい」 嗚呼、あなたのおわりの なんとおだやかなことよ 左様ならば、仕方ない 左様ならば、仕方ない さんざめく君たちの中に 本当があるというのでしょうか あなたはあまりにあっけない ほんとうの哀しみを 求めたとしても、 ほんとうの涙しか そこにはなかった。 海へと還す滴と花びらを。 黄泉へと返す心と言葉を。