真昼の陽炎によく似た 揺れ動く波の正体は靡く風 きっと風 忘れかけていたあの匂いに 揺れ動く心にそっと吹く風 君に風 茹だる声と 昼下がり 転寝 憂鬱を 飲料水に溶かして流し込めば 見上ぐ先 君が笑う 「もう夏だね」 さよなら また逢えるから 思い出に栞を挟むの 滴る汗も今だけは 重力に逆らえ 打ち寄せる波 防波堤 フラスコ瓶 映る西南西 「落ちたね」あぁ、夕暮れ 夕立 鳥居を潜ったら 落ちる雹に 蝉も鳴き止んだんだね 「そうだね」 懐かしむ声と 夏 霞んでいく音 故に 僕らは大人に成れずにいる 影を踏みながら君は嗤う 触れる足跡 ぼやけるシャドウ 溶ける氷菓に 目が合い笑えば 背中に夏、掠り傷 二人初めて恋を知る 下り坂 自転車 抱えたままの未練は 君のいない 夏のせいにしたくはないな 一つ、風吹いて空泳ぐ 二つ、君のいない宇宙を詠む 三つ、数えて夏を仕舞って 僕らはまた夢を見る 八月 青に呑まれ 二人はまだ夢を見る 「さよなら」 だけが僕らの 夏だった 君は笑ってた 季節超えて音に乗せて 歌う あなたは夏風