拝啓 親父 ついに俺も念願の家を買う事になりました 偶然だけど あなたとおんなじ年齢で あなたの家によく似た気持ちのいい 日差しが射し込む春障子 狭い庭だけど 色んな花を植えたいです あの頃毎朝同じ時間 電車の中潰され仕事行っては 疲れて帰ってくる あなたの顔を見てずっと 何が楽しくて生きてるんだろう こんな大人になんて ゼッテーなりたくねー なってたまるかと 頑なに否定し続けた かっこ悪い親父 かっこ悪い親父 かっこ悪いる~い親父 拝啓 親父 写真を撮ればいつも 目が半開きになっちまう ゴキブリ見ると 女の子のような悲鳴をあげる ゴルフに行けば誰よりも下手くそで 二日後に全身筋肉痛 育毛剤隠れて使っているけど 家族にバレてる 勉強もしないで遊び回る俺を 叱りつける事も出来ずに おふくろから「父親なんだからちゃんと言ってよ!」 逆に叱られるあなたの背中を 横目で見ながら 俺はまた靴のかかと踏んづけ 夜の街へとくり出していた かっこ悪い親父 かっこ悪い親父 かっこ悪いる~い親父 そして今 俺にも子供が出来て 何とか家を手に入れました こないだおふくろが 鏡に映る俺を見て 「父さんにそっくりね」と嬉しそうに呟いた 今気付きました あの頃の親父の顔は ただ疲れただけの顔じゃなくて 「家族を幸せにするんだ」 決意の顔だったんですね そんな俺も今 息子の目にどう写っているかはわかりません もしかしたら かっこ悪く見えてるかもしれません そうだとしても あなたのように飾らずに ありのままのこの背中 ずっと見せ続けてゆこうと思います いつか息子が父親になった時 かっこ悪い親父は 最高にかっこいい親父だったんだなと 思ってもらえるように かっこ悪い親父 かっこ悪い親父 かっこ悪いる~い親父 かっこ悪い親父 かっこ悪い親父 かっこ悪いる~い親父 拝啓 親父 最後になりましたが 陽の当たる縁側から見える きれいな花を眺めにきてください