ある朝目覚めると 俺は大人になっていた 声も枯れてシワも増えて 目の下にクマが出来ている 少しばかりの筋肉と 肩幅も少しついたらしい 部屋の隅に転がる靴下 その隣で異臭を出すゴミ袋 「あの頃は本当にごめん」 そう言ってくれた昔のやつら あの時裏切ったのは あいつじゃなくて 俺だったじゃないか なのになかったことにして 「なあ元気か?」って 何言ってんだよ 癒えてない傷に蓋が出来るほど 俺は大人にはなっちゃいない 俺は偏屈な人間なのに 上司はいつでも飯を奢った うまそうに飯を食う俺を 上司はいつだって可愛がった 恩返しをしたい そう思う時に限って手遅れだ 恩を売るだけ売り付けて 一体何で愛を伝えりゃいい 過ぎ去ったもの全てが許せない 夢よ早く覚めろ 大人になって分かった ことなんて単純だ 夏は暑くて冬は寒いこと 妄想だって思ったこの感情の全てに 名前があるということ 死ぬとか生きるとか そんなことより明日の飯どうしよう 感受性なんてもの捨て去って 今は今に死に物狂い 休みは一人で風俗行って 安い居酒屋で吐くほど飲んで 会社で出来た仲間と 下ネタ言い合う一週間 あるとき突然涙が出てきて 一歩も前に歩けなくて 誰もが俺を心配して 慰めてくれてなんて俺は幸せ者だ 幸せ者だ だから早く夢から覚めろ 立ち止まる勇気を認めない 自分が心底嫌いだ 大人になって分かった ことなんて単純だ 夢は叶うこと努力は報われること 一人は寂しいこと 二人は気まずいこと 人間は難しいこと やっぱりそうだよな もう二度と子供には戻れないんだ 大人たちが犯罪を起こす 理由がやっと分かったよ 苦しくて寂しい夜は 誰にだってあるよ 「あの頃は本当にごめん」 そう言ってくれた昔のやつら あの時裏切ったのは あいつじゃなくて 俺だったじゃないか でも嬉しいよ だって俺はずっと あいつを気にしてた 大人になるまでずっと 子供のままでずっと シワが出来るまでずっと 髪が痛むまでずっと 肌が荒れるまでずっと 息が切れるほどずっと 時間が全てを解決するって 実際ある話なんだな 俺は大人なんだ だから言うよ ごめんなさい 会いたかったよ 大人になって分かった ことなんて単純だ 人は醜くて人は優しいこと 心の奥に眠る憎悪が剥がれ落ちても 何も変わらない 大人になって分かったんだ 二度とは戻れないんだ