もがり笛が聞こえた午前0時。 こわくないよ、こわくないよ、 こわくないよ。って言った。 朝起きて、 ぼくの顔思い出せなくて、 紙切れに、震えを刻んだ。 さようなら、さようなら、 さようなら、さようなら。 処刑台に浮かんだ蛍。 あした 死んでしまうぼくはその緑に 溶けてしまいそうだ。 川が近いのか。幻なのか。 蛍の踊りがぼくを誘った。 汚れた布切れを身に纏ってから、 もう18年ものあいだ 息をしているぼくは、 裸の姿のまま美しく揺れて、 数日間息をしたきみを。 この薄汚れたぼくの両手で 捕まえて、柔らかく握ってみせた。 ぼくは明日の夜ここで 死んでいるらしいし、 きみも輝きをなくして、 朽ち果てた 杯の姿になっているんだろうな。 ぼくは 家畜の肥料にでもなるだろう。 きみは大地の養分にでもなるんだ。 輝きを放て。輝きを放て。 裸になった人間は 唄うことができるんだ。 輝きを放て。輝きを放て。 裸になった人間は 笑うことができるんだ。 ぼくは死ぬことが 怖くなってしまった。 せめて大人になりたかったんだ。 薄汚れた布切れにも放つ 光はあるのか。 光はなくとも、輝きはあるのか。 きみみたいな終わり方をしたい。 夜が明けて、 きみの光が見えなくなったとき、 次はぼくの番だ。 輝きを放て。