君と見た吾平の山は緑を増し そよそよと語るる風は桜を乗せ 移ろいゆく季節に 君を迎えし日は 遥か遠きあの匂いに 母を覚え泣いてた 海神(ワダツミ)の 愛の歌はそこに ひぐらしの 優しき音はここに 広葉樹の影で休んだ陽 かじかの鳴く滝で涼んだ日 思い初める 可惜夜のうちに 紅差し指 玉を伝えたし 依り代となるこの身に降りてく霊は かえらぬ日々とあなたに 何を求め言うのか 果てしなき アイの意味を胸に うたかたの この痛みも永久に 東行くあなたに人は願いをかけ ここで待つ私に人は祈りをこめ 喜びをなくして明日を迎える身は ゆくあてのない葉のよに風に吹かれ 散りゆく あー見えない 悲しみだけそばに あー消えない 心の波ゆれて 遣らずの雨 悲し 魂乞いに 心化粧 臍(ほぞ)をかためたし 喜びと別れすべてを消してくように 還らぬ痛み静かに 待たせたままで 変えられぬ この景色と共に まぼろしと アイの夢に満ちて たまゆらの温もりだけ置いて 残り香も 去り行かぬように