眺めていた 国道沿いを行き交う人々の群れ 「日が沈んだら 自然と泣いてたんだ」 寂しがり少年は笑う 誰かの声が鳴る方へ 空を仰いで 息を継いだ それはまるで水槽を眺める様で 水面に散りばめられた餌を探す 誰もが皆 呼吸を求め泳いだ 次第に高鳴る鼓動 いずれ誰かが水面に顔を出すだろう 誰かの背に足を乗せて 底から名前を呼ぶ声 懐かしくて 温もりのある声 それはいつか僕が落としたもので ああ、なんだったっけ たとえ呼吸ができずとも 水を裂いて君の元へ行こう 僕はきっと水面に立つさ 君の手をぎゅっと握りしめて 悲しみはやがて深さを増して そこで僕ら産声を上げた 流した涙は降雪の様に 降り積もって景色を変えた いつしか僕ら それを水槽と呼ぶことにした 生きるってことはつまりそう 悲しみの上に立って 笑う様なものだろう あの少年が笑ったように 生きて見せろよ たとえ呼吸ができずとも 水を裂いて君の元へ行こう 僕らきっと水槽の外へ 君の手をぎゅっと握りしめて たとえ呼吸ができずとも 水槽の外へ 水槽の外へ 水槽の外へ できずとも できずとも 眺めていた 国道沿いを行き交う人々の群れ 目を擦った手が少し濡れていたこと 寂しがり少年は笑う