Track by大石晴子
恥ずかしい痛みは 誰にも知らせないままで 捨てないままで 服の裏地のように 私にいつでも触れている 追っ手のない自由な私が ひとり水辺に腰掛けて 見つめたあなたの まつげは瞳よりも黒くて 平然と胸の奥を引っ掻いた 歩いて帰れない 苦しくとも致命的ではない熱が まだ続いている 私を縁取るものの多くが あなたと同じならば まばたきをして私 小さな火種繋いでいた あんまり綺麗で 黙って見つめたあなたの まつげは瞳よりも黒くて 平然と胸の奥を引っ掻いた 歩いて帰れない