やがて夢 現と成るは ゐつの日なるやと君は言ふ ゆふぐれの雨冷たけれど君の声は暖 かき くれなゐの唇が歌ふ 其はひとゑに春のやう 君の待てる日はゐつなりとて恋のに ほひに溢れたり さうざうしさのあまり咲きし朱金の 花 飾らぬ心地で ゐま ゐま 乞うは蘭の街 あゝ 恋は皐月雨呼びて花を濡らしけり 夢の泉に雨は降りて君を咲かす 蝶のらうたき羽にしほたるる雨水を 掬ひ取りき せちに思ふ君がゐつの日か我を置き ゆくかもしれぬと かしがましさのあまり隠れし鈴の音 が 鳴り止まぬ内に ゐま ゐま 乞うは蘭の街 あゝ 恋は皐月雨のやうに泪流るるなり 夢の吐息を知りし蝶が雨を避けき とこしへに君を思へり この恋の枯るるはなし 君は皐月雨見たり我は君を見たり 雨が上がりし頃に東京に君は在らず 恋は皐月雨呼びて花を濡らしけり 夢の泉に雨は降りて君を咲かす 恋は皐月雨呼びて眼濡らしけり あゝ どうかお元気で