物謂わぬ口唇に生気[いき] を吹き込んで、 今宵「 」 [あなた]は甦る。あの頃の姿で。 白肌の娘が咳をした。 「この身体貴方に捧げるわ」 白服の医者が囁いた。 「迎えに行くよ」 白肌の娘は朽ち果てた。 世界の誰にも見棄てられ。 白服の医者は憐れんで、 誰も知らない居場所で眠らせた。 朽ちてもまだ美しい顔で、 ふたりしかいない霊廟で、 医者は恋をした。 それは永遠の恋か。禁断の行為か。 また逢いたいと願うだけ。 それが罪なのでしょうか。 物謂わぬ口唇に生気[いき] を吹き込んで、 今宵ふたりは結ばれる。 祝福もされずに。 「腐り墜ちた眼孔に青い硝子を」 「破れかけた腕に絹の肌を」 「侵された内臓に綿のガーゼを」 「宝石で飾った純白[しろ] いドレスを」 朽ちゆくたび取り繕って、 恋を謳って、 また医者は手を染め続けた。 やがて暴かれたのは醜悪[みにく] い怪物で、 「 」 [それ]を造り上げた医者は、辨駁 [べんばく]を叫んだ。 「これは永遠の恋だ。 彼女の願望[ねがい]だ。 死にゆくと決めたお前らが見棄てた 女じゃアないか」 嗚呼……哀しき花嫁。 物謂えぬままで、 今宵ふたりは裁かれる。 彼女を見棄てた人達の正義で。 正しいのはだあれ?