幼い頃に聞いた 古い言い伝え 家の大きな古斗景 銀の手鏡 午前零時に 鏡に映すと (ほら)斗景が逆に回り出す 次の鐘が鳴るまでの 鏡の魔法 鏡に写った 笑顔のわたし 過去に戻りたいなら 振り返りなさい 鐘が鳴ったら 魔法は終わる 悲しいときは 覗いてごらん 鏡の中に 笑顔のわたし 慰めてくれる 昨日のわたし 話しかけても 良いけれど 問いに答えちゃ いけないよ 悲しいことがあったの 鏡を抱きしめる 母の部屋から持ち出した 銀の手鏡 午前零時に斗景を映し 鏡をそっと覗き込む ぐるぐると回る 斗景の針と 背後から微笑む 昨日のわたし 笑顔で優しく 囁くわたし 『悲しいことがあったのね』 「時間を戻してくれる?」 『それじゃあ こっちを向いて』 振り返りかけて 鏡を伏せた 寂しく響く 鐘の音 部屋から消える ”わたし”の気配 やっと思い出した 秘密のルール 悲しいときは 覗いてごらん 鏡の中で 微笑むわたし 鏡の中の 冷たい世界 問いに答えちゃ いけないよ 振り返っては いけないよ