裏切りの人生

歌詞

裏切りに始まり 裏切りで終わる それが俺の人生だ それが俺の宿命なのさ 最初の裏切りは　生みの母親から 捨てられていたのさ 雨の降る夕暮れ [ドルーリー・レーン劇場の 前にな。] 親が誰か　手がかりもなく 十五までいた　孤児院に 腹すかせ　殴られ　おびえていた [「院長先生、 朝から何にも食べてないんだ。 ひもじいよ！」] [「ジャック、 おまえみたいなヤツに 飯はやらん！」] [ジャック？] [拾われたとき着てた産着に 書いてあったそうだ。 親からもらった唯一のものさ。] 次の裏切りは　主の息子から [田舎の地主に引き取られて、 朝から晩までこき使われた。 水汲み、馬の世話、掃除。 さらに雑用以外の 「役目」を与えられた。 主の息子の剣の相手。 俺はうっかり殺しちまっても かまわない練習相手だった。] [「さすがです、若様。」] [初めて握った剣は、 不思議と手になじんだ。 俺はまじめに働いて 主に信頼された。 でも……] ある夜　親子喧嘩を聞いた [「ジャックを養子に？ お父さん、正気ですか。」] [「ジャックを見習え。 おまえは女と遊び歩いて ばかりじゃないか。」] [その翌日の夜。] [「若様、お呼びですか。」 「若様！？」] [「親父に取り入りやがって。 財産を狙ってるのか、 ジャック！」] [「とんでもない！」] [「ドブネズミのくせに。」] [「何すんですか？ やめてください！　あ！」] 大変だ　どうしよう 逃げるんだ　今すぐ どこにも行くあてはない 気づけば目指してた あの劇場を [ドルーリー・レーン劇場。 俺が捨てられてた場所。 めかしこんだ連中にまぎれて しのびこんだ。] [「こんなきれいなとこ、 生まれて初めてだ。」] [「おお、ロミオ、ロミオ！ なぜあなたはロミオなの？」] 華やかな舞台の彼女 一目で惚れこんで 通い詰めた　毎日　劇場へと [そのためには稼ぐ必要があった。 だから――] 決闘の代理人　俺は始めた 剣の腕なら負けない 金になった　笑えるほど [決闘士としての評判は 上々だった。 酒と女の味を覚えた頃……。] [「シャーロット！」] [「あら、 いい男連れてるじゃないの。」] [「ねえ、ジンの飲み比べしよ。 負けたら勝った方の 言いなりになるの。」] [「いいとも！面白れえ。」] ONE　いいぞ TWO　いいぞ THREE　もっと FOUR　グイっと FIVE　いける SIX　いける SEVEN　そうだ EIGHT　まだだ 胸を熱くこがすのは　恋とジン 明日のことなんか忘れて　恋とジン 酒におぼれて　恋におぼれ 夜が更けるまで 踊ればいいさ　踊ればいいさ [「もう酔ったの、ジャック？」] [「なに？　これくれ～へ～きら。] NINE　いいぞ TEN　いいぞ　グラス空けて [「あたしの勝ち！ さ、あたしの 言いなりになるのよ。」] 胸を熱くこがすのは　恋とジン 明日のことなんか忘れて　恋とジン 酒におぼれて　恋におぼれ 夜が更けるまで 踊ればいいさ　踊ればいいさ 時を忘れて　自分忘れて 淡い星影　そぞろ歩いて ジンの余韻と　恋の予感 小さな罪に　心は揺れる [このシーンはレディにとっては お目汚し。 ご想像におまかせします。] [のぼせあがったジャックは シャーロットの部屋に 通い続けました。 でも、シャーロットには 貴族のパトロンがいたのです。] [つまり、 シャーロットはその貴族の愛人。] [でも恋は盲目。半年後……] [「シャーロット、 俺と一緒にならねえか。」] [「……本気？」] [「駆け落ちしよう。」] [「うれしいわ、ジャック。 ずっとあたしのそばにいてね。」] [「今夜、芝居がはねたあと、 客席で待ってる。」] [「ええ！」] 劇場が　たった一つの光だった 俺の人生 第二幕を　彼女と創ってゆこう [「ジャック様ですね、 さるレディから 伝言を預かりました。」] [「伝言？」] [「おバカさんへ。さようなら。 『別れるのってこんなにも甘くて、 悲しいものなのね。 それならば、 朝まで言いつづけていたいわ、 さようならって』」] [「シャーロット……」] [「彼女はきみじゃなくて、 金を選んだ。ぼくは彼女の パトロンから、代理として 決闘するよう頼まれている。」] [「決闘？　あんたは……？」] [「デオン・ド・ボーモン。」] [「きみはなかなかの腕だと 聞いている。楽しみだ。 さあ、剣を抜きたまえ。」] [「え？　あ、ああ。」] [「きみに決闘を申し込む。」] [「期待はずれだったな。 アデュー、ジャック。」] 裏切りに始まり　裏切りで終わる それが俺の人生だ それが俺の宿命なのさ [気がついたら 劇場の客席に座ってた。 ゴーストになって。]