「あの子は彼と付き合ったって」 「引っ越したようだ」 「同棲するんだっけ」 止めどなく届く風の便りには 僕宛ての言葉は一つもない 聴きたくない声ばかりだ 無邪気に漂うこの郵便はさ 自信がなかった あの頃の僕は もう一度 君を知りたかったな 何気なく想い出して 何気なく筆を 取る あぁこの住所は もう空家だったっ け 書き終えた文字を クシャクシャに した 置いてかないで 僕を想い出に 耳に届く噂は 無責任で 流る世界に 遊び過ぎた 気付いてたんだ 君が好きだったと 「この前喫茶店で見たよ」 「1人だったみたいだ」 「どうしたんだろうね」 止めどなく届く風の便りには 胸の鼓動にすら気付かない振り 部屋の中うろついて 出会うのが怖 くて 僕の事など遠い人だろう 「忘れてはいないさ」強がってみせ た 胸ポケットの ポストへ投げられた 手紙はもう 引き出しで色褪せた 深い眠りを 起こすように 指でなぞった場所へ 歩き出した 時々、頭をよぎっていた 君の幻を掻き消すように 一つ、一つ、また、一つ 歩いてみせるんだ 想い出の鳴る方へ 心が鳴る方へ 君の姿はもう変わってしまったろう それも僕の眼を腫らすだろうな やり切れない頃の 僕を許そうか 何も数え切れてない 自分の事を 君を見るまでは ただの子供 僕らの中では まだ子供の頃 置いてかないで 僕らを想い出に 出会った今は もう現実の中 あの頃のように 君が笑う 風のような囁きが 聴こえてる