いくつかの水たまりを残して 梅雨が駆け抜けてしまえば しめった風の背中越しに きみの好きな夏が来ます あの日きみにせがまれて でかけた小さなお祭り 綿菓子の昧 アセチレンの光 きみは赤いほおずきを買った ため息でまわした ひとつのかざぐるま とまらずに とまらずに まわれと二人 祈っていたのに きみの下駄の鼻緒が切れた ひとごみに まかれて 切れた 僕の肩にすわり うつむいたきみは おびえるように 涙をこぼした 走馬灯に照らされて 僕はほおずきをかんで 風鈴の唄に合わせてきみが 団扇で そっと風をくれた 僕の肩越しに 子供の花火をみつめ きみは小さくつぶやいた 消えない花火があるなら欲しいと たわむれに刻んだ 二人のだけくらべ 背のびして 背のびして つま先立っても とどかない あの日のお祭りに 今夜は一人で行ったよ 想い出のほかに ひろったものは 誰かが忘れた ほおずきひとつ