ねえ、ジュライ もうすぐ夏が生まれる 繭を脱いで 燃え上がる入道雲は高くて遠い 大きくて怖い 合わない水で 悪い夢にうなされる脳を冷ました グラスの底に 溜まった貯水池をぐるっとまわる道 あのバスでしか 行けない場所で見ていた花火とか 二回り小さい画面に残ってる 聞いて、ジュライ もうすぐ夏が飛び立つ 羽根を伸ばして 一番星のふりした街灯の 光を浴びて煌めいてる あのね、ジュライ あれから後書きのように日々を 綴って 忘れないでいるから きっと、ずっと 薄荷色の空の先で待っててよ 四角いバニラ 高い熱にうかされる脳を冷ました くわえたままの 後味で思い出す雨の帰り道 あの坂の上 青い紫陽花に隠れたベンチとか 一回り小さい画面に残ってる どうか、ジュライ 期限の切れたよすがに止めを刺して 末枯れた国道沿いで鳴いた 声だけがまだ残って響いてるの あのバスでしか 行けない場所で見ていた花火とか 思わず顔を伏せた歩道とか 他愛のない喜怒哀楽の送受信とか コンクリートの鯨の横 下ってたどり着く海岸 見上げれば大粒の夜が 予報通り、頬をつたって落ちてくる 靴底に溜まるそれに溺れて このまま帰れなければいいのに いつも此処で醒めて、 現実 ねえ、ジュライ もうすぐ夏が落ちてく 世界が暮れる 末枯れた国道沿いで泣いた 僕ら、もう行かなきゃいけないね けどね、ジュライ あの日の夏は消えない それだけでもう 生きて、死ねるんだ きっと、ずっと 薄荷色の空の先を想ってるよ 抜け殻のジュライ もうすぐ夏が還ってく またね