豆腐屋のラッパで始まる夕暮れは どこか物悲しいウイスキーの色で 山に帰る烏の声を聞きながら 幼い俺は泣いていた 貧しさの中を生き抜く術は 笑えない毎日を笑うことだけで 煌めく街の灯りを見上げては 小さな背中が泣いていた 忌まわしき日々 思い出すたび 心に深く刺さるくらいに あまりに暗く閉ざされた夢 光の中を走りたかった それでも愛していた 心から愛していた この俺を苦しめた「昭和」 という時代を ドラマん中の台詞みたいに 去りゆく時代に「あばよ」と云って 無法者の頭を流れる唄は 古臭い昭和の欠片かもしれない 路地裏で吐き出す 深いため息に 血塗れの右手も哭いていた 時代遅れの哀しい侠たちよ 俺も同じ胸の痛みを 抱え続けて明日を生きよう 色彩のない世界を 灰色の街を…… どこかで愛していた 心から愛していた この俺を苦しめた「昭和」 という時代を 失くしてしまったものや 自ら棄てちまったもの 全てを抱きしめて「あばよ」 と呟いた 最後に一言だけ 最後に言えればいい 最後に一言だけ 昭和に生まれてよかったと 昭和に生まれてよかったと 昭和に……