ごみ山の隅 起き上がる影 薄汚れた 白い毛並み 空を仰ぐ 蒼い瞳 風に揺れる髭のセンサー 乱れた信号 演算の解 繋ぎ合わす記憶の回路 解らないまま 歩き出す猫に 足の捥げた人形が言う 「どこに行くの 帰る場所は あなたにはもう無い」と 「でも僕は 行かなくちゃ きっと僕を待ってるから」 もう一度でいい 僕を撫でてよ その柔らかい掌で もう一度でいい 僕を呼んでよ キミのくれた僕の名前を もう一度でいい 僕を見つめて 僕と同じ蒼い瞳で もう一度でいい 僕を抱いてよ その白くて細い腕で 解ってたんだ初めから 帰る場所はもう無いと 「でも僕は 行かなくちゃ きっとキミは待ってるから」 もう一度でいい 僕を撫でてよ その柔らかい掌で もう一度でいい 僕を呼んでよ キミのくれた僕の名前を もう一度でいい 僕を見つめて 僕と同じ蒼い瞳で もう一度でいい 僕を抱いてよ その白くて細い腕で キミのため涙も流せない キミの笑顔守れなかった 何一つキミの役に立てない 無能な猫型ロボットに 小さな命尽きる時まで 偽りのない愛をくれた だからこの体が止まるまで キミのため出来ることを 夕日沈む 小高い丘 キミの名が刻まれた石 風が撫ぜる 白い毛並み 祈る姿のまま今止まった