人波に押されて見上げた花火とか、 赤すぎるりんご飴のこととか。 高すぎて買わなかった綿菓子とか、 金魚掬いがなくなったこととか。 手のひらの温もり、淡い浴衣の色。 喧騒を背にした駅までの帰り道。 あの夏の夜は今でも僕の中にある。 宵待ち花火と幼き恋へのあこがれ。 あの夏のように 儚く消えてしまいそうな、 青いサイダーの味。 花火が終わって見上げた夜空とか、 初めて手をつないだこととか。 火薬の匂いとか、寂しさとか。 確かに僕らはあの夜にいた。 言葉には出来ずに彷徨った思いは、 宵の闇の中で ざわめきにとけてった。 夏が来る度に 何度も思い出すだろう。 八月の夜のきらめき、胸の高鳴り。 思い出の中に僕らの夏の忘れもの。 青く揺れる思い。 君の住む町、駅で手を振った。 遠ざかる後ろ姿を ただずっと見ていた。 あの夏の夜は今でも僕の中にある。 宵待ち花火と幼き恋へのあこがれ。 あの夏のように 儚く消えてしまいそうな、 青いサイダーの味。 青く揺れる思い。