あなただけが全てじゃないから 悲しいだけが別れじゃないから 満たされない それが僕たちの合言葉で 繋がっていた 缶ビールの底みたいな虚しさが 僕たちにはお似合いだった 少年少女の錯覚 浴槽の中で抱いた 溢れそうな透明をそっと揺らして ユートピア 絶対的だった僕たちに 未来はなかった あなたは言った 「蜃気楼みたい」 あなただけが全てじゃないから 悲しいだけが別れじゃないから 満たされない それを僕たちは いつの間にか言わなくなった 今思えば僕たちに 接点は何もなかった あなたはスーツを着て 薄化粧で家を出た 滲み出る聡明をそっと照らして 普通になっちゃいけない理由なんて ないのに すごく怖かった あなたは言った 「二度と戻れない」 暗い暗い瞳の奥 ぬるい広い水槽 思い出してただ叫んでいた 有象無象の中でひとつ 傷くらい持ってかせてほしいよ 僕を殴って あなただけが全てじゃないから 悲しいだけが別れじゃないから あなただけが全てじゃないけど 満たされないことに 満たされてたから あなたの涙が混ざったこの痛みを 感じない日々に慣れていくから あなただけが全てじゃないから