「山手線は 人身事故で」熱のないニュースが 鼓膜で踊る 愚かしい僕は 焦げたトーストに ラズベリーのジャムを 塗って貪(むさぼ)る ここ数年の 憂いと言えば 転職をするか どうかくらいで 今 浅き人生 茹(う)だる太陽が 見透かすように 別れは訪れるもの 皆 「何のために、産まれたの?」 「何のために、生きてくの?」 真夏に命を削られて 羽根の折れた蝉が 唄いだす 「何のために、死んでくの?」 「このままじゃ、いれないの?」 火葬場であなたを叩いた あの日の少年を 想いだす 母親からの 電話の後で 午後の山手線 何周もした 愚かしい僕は こんな時だけ 人生の切符を 探し求める 恋人からの 不在着信 疎(まば)らな車内で 浮遊していた 今 ネジを巻いた 華奢(きゃしゃ)な心臓が 別れを惜しむかのよう 軋(きし)み泣いている ただ 「何のために、産まれたの?」 「何のために、生きてくの?」 指折り数えてみたのなら 辛いほうが多い この街で 「何のために、出逢ったの?」 「何がゆえ、離れるの?」 正解でなくても良いから か細いその声で 聞かせてよ 「もうすぐ 僕が産まれた日のあなたと 同じ歳になります」 「出逢うために、産まれたよ」 「誰かのため、生きてくよ」 真夏に命を削られて 羽根の折れた蝉は いつまでも 「出逢うために、産まれたよ」 「願うから、歩けるよ」 「ありがとう」じゃ足りずに涙が 濡らしたこの蕾 咲かせます