海鳴りさえ 届かない 静寂(しじま) 波に踊る 泡と 私の慟(なげ)き 漂い乍(なが)ら 蠱毒(こどく)を 宿す 菖蒲(あやめ)は 憑く 憑坐(よりまし)に 齎(もたら)す事を 選(すぐ)らぬ 想い丈を 抱き締めたの 恋い恨み 乍(なが)ら 赤む 頬が 訴うのは 煩う 胸 此の 祷(いのり)は 身に過ぎたの 忌まわしい 置目(おきめ) 貴方の 背を 睨まえた 其の 業(わざ) 異(け)し 呼び名にさえ 音のない 蠱(むし)が 際に迫る 気振(けぶ)り 酬いの調べ 只 酔い乍(なが)ら 孤独を 厭(や)とし 危(あや)めた 尽くより 増しに 覚ゆる 心の 儘に 想い丈を 抱き締めたの 恋い恨み 乍(なが)ら 赤む 頬が 訴うのは 煩う 胸 此の 祷(いのり)は 身に過ぎたの 忌まわしい 置目(おきめ) 貴方の 手を 掴まえた 其の 業(わざ) 異(け)し 漕ぎ戻して 告げたい 其の愛こそ 彼我(ひが)に 蠧毒(とどく)を 沃(い)る 愛しい男(ひと) 憎んだ 私を 怨(え)ず 其の骸を 抱き締めたの 只 悔やみ 乍(なが)ら 絡む程に 痛むのは 足掻(あが)きの 指 然(そ)うよ 敵(あだ)して 此の 宿主 呪わしい 朽女(くちめ) 骨身 深く 貫いて 波 静けし