栞 はさんでた ページを開くように 十月 金色の匂い 時間を戻らせる 隣に残った 余韻さえもうないから グラデーションの空に 踏み潰されそう 最初に忘れてしまうのは声で 最後まで覚えているのは匂いらしい どうりで 僕はまだ 金木犀の木に繋がれて 動けないでいるよ 金木犀の木に しがみついているよ 明日、もし雨が降ったとして もう金色の匂い 連れ去ってしまうの? 夕暮れのファインダーを 覗いてみても 手を振る姿 思い出せないくらい 時間が経ったな それなのに 金木犀の木に繋がれて 動けないでいるよ 金木犀の木に しがみついているよ 君がいたあの頃で満ちる時間が どこか愛おしくて 金木犀が香る度に また思い出すだろう 金木犀の木に繋がれて 動けないでいるよ 金木犀の木に しがみついているよ