線路下の短いトンネルを抜けると 雨が止んだ 青空に滲んだ世界の温度は 今日もまた 僕らを置き去りにしていく 開けっ放しのカーテン 鈍色 六畳間 ぼやけた視界にそっと降った 影を見た この心臓があと何回動いたら 思い出に変わるだろうか 陰る、雲に 月の白さと 過ぎる今日の 隙間にひとり 靴の音が響く行方に待つ 意味があるとするなら 僕らの夜に咲け春のうた 目下過ぎ行く8メーター毎秒を 追うのだ 遥か黎明に風吹けばまだ 見える あの星の名前は 遠く 鳴ったサイレン 零れ出す錆色 時計が止まったような瞬間 呼吸の音 あと何小節ぶんの青で描いたら あの空になれるだろうか 忘れていたこと 忘れていくこと 寂しくないのが寂しいこと 背伸びだけじゃ足りない場所に 手を伸ばす意味があるから 僕らの夜に咲け春のうた どうか月明かりさえ 見えなくなるまで 春風吹けば日々を散らせ 一寸先の闇へ踏み込んで また明日、じゃあね を使い切ってしまう前に 絞った声で目の奥が痛むような藍を 歌う あのみずいろの先へいこう それから夢の続きを 僕らの夜に咲け春のうた きっと 340メーター毎秒じゃ届かないから 言葉になれ 夏がまだ 来ないうちに あの星の名前を 僕らだけの名前を