拝啓 ある私へ 帰れる場所は まだその海のない街です 無償の愛の匂いだけが残ります かつてペダルを漕いだ坂道を 頬杖して今、 車の窓から見下ろしています 見落としてしまう 気後れした恋です あの娘に私を重ねてしまう あなたがいたことさえも 拝啓 あくる私へ ——最後にしよう 泣いていた日々もやがて この街は手放すでしょう 明け方に発とう 振り返らずに 筆を置いたその夜に 雷鳴 雨!雨! 雨が降って、海になって 帰れなくなれば それも良い それが良い このまま戻らない灰になって 今すぐこの狭い海を泳ぎたい あの娘に私を重ねてしまう あなたがいたことさえも 私の背景さえも